「虫歯を長い間放置していたら、気づいたら歯の根っこしか残っていなかった」、「差し歯が取れてしまい、根元だけになってしまった」
そんな経験や不安をお持ちの方は少なくありません。
歯の根っこだけが残った状態は「残根(ざんこん)」と呼ばれ、適切な対処が必要な状態です。
「もう手遅れかも」、「絶対に抜かなければいけないの?」と思っている方もいるかもしれませんが、残根の状態だからといって必ずしもすぐに抜歯になるわけではありません。
根の状態によっては、歯を残すための治療が選択できる場合もあります。
この記事では、長野県松本市の望月デンタルクリニックの現役歯科医師が、残根とは何か、そしてその原因、放置した場合のリスク、具体的な治療方法までをわかりやすく解説します。
歯の根っこだけが残る「残根」とはどんな状態?
まずは、残根という状態がどういうものなのかを正しく理解しましょう。
残根(ざんこん)の定義
残根とは、歯の上の部分(歯冠)がなくなり、歯の根っこだけが歯ぐきの中に残っている状態のことをいいます。
通常、歯は「歯冠(しかん)」と「歯根(しこん)」の2つの部分から成り立っています。
歯冠はお口の中から見える白い部分で、歯根は歯ぐきの中に埋まっている根の部分です。
虫歯や外傷などによって歯冠の部分が溶けたり折れたりしてしまい、根っこだけが残った状態が残根です。
見た目には「歯がない」ように見えることも多く、歯ぐきの中にひっそりと埋まっている場合もあります。
残根になる主な原因
残根が生じる原因にはいくつかのパターンがあります。
以下に代表的なものをまとめました。
- 虫歯の放置:虫歯を治療せずに長期間放置すると、歯の内部から溶けが進み、気づいたときには根っこしか残っていない状態になることがあります。
- 治療の途中放置:神経の治療(根管治療)を途中でやめてしまうと、歯の内部が露出したままになり、急速に虫歯が広がって残根化することがあります。
- 差し歯(被せ物)の脱落:差し歯が外れると、残っている根っこが歯ぐきよりも低い位置にある「残根状態」になることがあります。
- 外傷・転倒:転倒や衝撃によって歯の冠部分が折れ、根だけが残ることもあります。
これらの原因の中でも特に多いのが虫歯の放置と、治療の途中放棄です。
「痛みが落ち着いたからいいや」とそのままにしてしまうケースは非常に多く、気づいたときには深刻な状態になっていることも珍しくありません。
残根を放置するとどうなる?放置のリスク
残根の状態になると、痛みがなくなることがほとんどです。
痛みがない理由は、虫歯が歯の神経まで到達してしまい、神経が死んでいるためです。
むしろ神経が死んでいる状態だからこそ、細菌が根の内部や周辺に繁殖しやすく、知らないうちに深刻な状態に進んでしまいます。
細菌感染・膿(うみ)の蓄積
残根の表面や根の内部には、多くの細菌が住み着きやすい環境ができています。
時間とともに細菌が増殖し、根の先に膿がたまって袋状のもの(歯根嚢胞・しこんのうほう)ができることがあります。
ある日突然、ズキズキとした激しい痛みや大きな腫れが現れることも多く、そうなると治療は長期化・複雑化します。
周囲の歯への悪影響
残根に付着した虫歯菌や歯周病菌は、隣り合う健康な歯にも悪影響を及ぼします。
隣の歯が虫歯になったり、歯周病が悪化したりするリスクが高まるため、一本の残根が他の歯の寿命を縮めることにもつながりかねません。
噛み合わせの乱れ・骨の吸収
歯がなくなると、周囲の骨(歯槽骨・しそうこつ)が少しずつ吸収されていきます。
骨が減ると、将来インプラントや入れ歯などの治療を行う際に選択肢が狭まってしまうことがあります。
また、噛む力のバランスが崩れることで、残っている他の歯に過剰な負担がかかり、歯が割れたり、顎関節に問題が生じたりすることもあります。
口臭の原因になること
残根周辺には汚れがたまりやすく、細菌が繁殖するため、口臭の原因になることがあります。
どれだけ丁寧にブラッシングをしても、残根の部分の汚れを完全にコントロールすることは非常に難しい状況です。
歯の根っこだけが残った場合の治療方法
残根の治療方針は、根っこの状態(長さ、強度、感染の程度、ヒビの有無など)によって異なります。
大きく分けると「歯を残す方向での治療」と「抜歯してから補う治療」の2つのアプローチがあります。
歯を残せるかどうかは精密検診で判断
治療の前に必ず行うのが、精密な検査と診断です。
レントゲン撮影や、必要に応じてCT検査を行い、根っこの長さや太さ、周囲の骨の状態、感染の広がりなどを確認します。
この診断によって、歯を保存できるかどうか、どの治療法が最適かが決まります。
「抜くしかない」と他院で言われた方でも、精密に診断することで歯を残せるケースがあるため、まずは相談してみることをおすすめします。
①根管治療(こんかんちりょう)+被せ物(かぶせもの)
根っこがある程度残っており、ヒビや割れがなく、感染のコントロールができると判断された場合は、根管治療(歯の神経の治療)を行います。
根管治療とは、歯の根っこの内部(根管)を丁寧に洗浄・消毒し、細菌を取り除いたうえで、薬剤を詰める治療です。
根っこの中をきれいにすることで、細菌の繁殖を抑え、歯を使えるように再生します。
根管治療が完了したら、次に「土台(コア)」を根管に差し込んで歯の芯を作り、その上にかぶせ物(クラウン)を装着します。
こうすることで、見た目も噛む機能も取り戻すことができます。
根管治療+被せ物が適用されやすいケース
- 根っこがある程度の長さ・強度を保っている
- 根っこにヒビや縦割れがない
- 根の先の感染がコントロールできる範囲にある
②歯周外科処置(クラウンレングスニング)
歯の根っこが歯ぐきよりも低い位置にある場合、そのまま被せ物をしても精度の高い治療ができません。
そのような場合に行うのが、歯ぐきや周囲の骨を少し削って、根っこが見える位置に調整する「クラウンレングスニング」という外科的処置です。
この処置を行うことで、歯ぐきよりも根っこの断面を高く位置づけることができ、精密な型取りや被せ物の接着が可能になります。
結果として、長持ちする治療に仕上げることができます。
③エクストルージョン(牽引法)
根っこが歯ぐきの中に深く埋まっているケースで、外科的な切開を避けたい場合や条件が整っている場合に行われる治療法です。
矯正力を利用して針金とゴムで根っこをゆっくりと引っ張り上げ、歯ぐきよりも上に出た根っこを使って被せ物を作ります。
自分の歯根をそのまま活かす方法のため、骨や歯ぐきへの負担が少なく、体にやさしい治療といえます。
ただし、矯正力を使うため治療期間が数ヶ月かかることが多く、対応できる歯科医院が限られます。
④抜歯
以下のような状態の場合は、残念ながら歯を残すことが難しく、抜歯が検討されます。
- 根っこが非常に短く、土台を作れない
- 根っこに縦のヒビや割れ(歯根破折)がある
- 虫歯が歯ぐきのずっと奥まで進んでいる
- 根の先の感染が広範囲に及んでいる
抜歯自体は麻酔をして行うため、治療中の痛みはほぼありません。
ただし、残根の抜歯は一般的な抜歯よりも難易度が高いケースもあります。
根っこを掴む歯冠がないため、特殊な器具を使ったり、場合によっては歯ぐきを切開したりして抜歯を行います。
歯を失った後はどうする?
残根を抜歯した場合、そのままにしておくと上述した噛み合わせの問題や骨の吸収が進んでしまいます。
抜歯後は欠損部分を補う治療(補綴治療)を行うことが重要です。
抜歯後の主な選択肢
代表的な3つの選択肢を比較してみましょう。
| 治療法 | 特徴 | メリット | デメリット |
| インプラント | 顎の骨に人工の根を埋め込み、その上に人工歯を装着 | 自分の歯に近い噛み心地・見た目。隣の歯を削らない | 外科手術が必要。自費診療のため費用が高め |
| ブリッジ | 抜歯した両隣の歯を削り、橋のように連結した被せ物を装着 | 保険適用も可能。手術不要 | 健康な隣の歯を削る必要がある |
| 入れ歯(義歯) | 取り外し式の人工歯 | 保険適用で費用を抑えられる。手術不要 | 噛む力がやや劣る。取り外しの手間がある |
どの治療法が適しているかは、欠損している歯の本数・位置、全身の健康状態、骨の状態、ご本人のご希望などによって異なります。
歯科医師とよく相談しながら決めることが大切です。
特殊なケース:オーバーデンチャー
抜歯せずに残根を活用する方法として「オーバーデンチャー」があります。
これは残根の表面に小さなドーム状のキャップを被せ、その上に入れ歯をはめ込む方法で、残根が入れ歯の「土台の柱」の役割を果たし、普通の入れ歯よりも安定感が増します。
歯ぐきだけで支える入れ歯と比べ、噛む力がしっかり伝わりやすく、骨の吸収も緩やかになる利点があります。
全身疾患などで抜歯にリスクがある方や、骨の保存を重視したい高齢の方に選択されることがあります。
治療にかかる費用の目安
残根の治療費は、治療内容や保険適用の有無によって異なります。
| 治療内容 | 保険適用 | 費用目安(3割負担の場合) |
| 抜歯(通常) | 〇 | 1,000〜3,000円程度 |
| 根管治療 | 〇 | 3,000〜10,000円程度 |
| 被せ物(銀歯) | 〇 | 3,000〜7,000円程度 |
| 被せ物(セラミック) | △(自費) | 50,000〜150,000円程度 |
| インプラント | ✕(自費) | 300,000〜500,000円程度/本 |
| エクストルージョン | △(状況による) | 60,000円〜(自費の場合) |
※上記はあくまで目安です。歯の状態や医院によって異なります。
根っこの治療でお悩みなら長野県松本市の「望月デンタルクリニック」
残根の治療において最も大切なことは、早期に歯科医院を受診することです。
放置すればするほど感染が広がり、治療の選択肢が狭まり、逆に言えば、早期に発見できれば歯を残せる可能性が高まります。
「もう手遅れかも」「怖くて行けない」という方の気持ちはよく理解できますが、残根の状態でも、精密な診断を行えば歯を保存できるケースが確かに存在します。
長野県松本市にある望月デンタルクリニックでは、お一人おひとりのお口の状態を丁寧に検査・診断し、できる限り歯を残す方向での治療をご提案しています。
他院で「抜くしかない」と言われた方でも、セカンドオピニオンとして相談にきていただけることも歓迎しています。
「自分の歯がどういう状態なのか」「どんな治療の選択肢があるのか」を正確に知るためにも、まずはご相談ください。
| 医院名 | 望月デンタルクリニック |
| 院長 | 望月 一彦 |
| TEL | 0263-24-8148 |
| 所在地 | 〒390-0851 長野県松本市両島1-13 |
| 診療時間 | 9:00〜13:00 / 14:30〜18:00 |
| 休診日 | 木曜・日曜・祝日 |
