神経の治療後なのに歯をコンコン叩くと痛い・響くのはなぜ?根管治療専門医が解説

「神経を抜いたはずなのに、歯を叩くと痛みがある」「コンコンと軽く叩くだけで響くような違和感がある」

という経験はありませんか?

根管治療(神経の治療)を受けたにもかかわらず、歯に違和感や痛みが残ることは決して珍しいことではありません。

せっかく辛い治療を終えたのに痛みが続くと、「治療は失敗したのでは」「このまま歯を失ってしまうのでは」と不安になる方も多いでしょう。

しかし、治療後の痛みには様々な原因があり、一時的なものから早急な対応が必要なものまで、その性質は異なります。

この記事では、長野県松本市で根管治療専門医として数多くの症例に対応してきた望月デンタルクリニックの院長が、神経治療後に歯を叩くと痛い・響く原因について、専門的な視点から分かりやすく解説していきます。

神経治療後の「打診痛」

歯科医院で歯を軽く叩かれて「痛いですか?」と聞かれた経験がある方は多いのではないでしょうか。

この検査を「打診(だしん)」といい、この時に感じる痛みを「打診痛」と呼びます。

打診痛は、歯やその周囲の組織に何らかの異常が起きている可能性を示す重要なサインです。

根管治療後に打診痛がある場合、治療直後の一時的な反応から、再治療が必要な状態まで、様々な原因が考えられますが、主に以下のような特徴があります。

  • 歯を指や器具で軽く叩くと痛みや違和感がある
  • コンコンという刺激が歯に響くような感覚がある
  • 噛むと痛みを感じることもある
  • 何もしていない時は痛くないこともある

これらの症状は、歯の周囲の組織に何らかの炎症が起きていることを示している可能性があります。

神経ではなく歯の周りの組織の痛み

多くの方が疑問に思うのが「神経を抜いたはずなのに、なぜ痛みを感じるの?」ということです。

歯の中心部には「歯髄(しずい)」と呼ばれる組織があり、これが一般的に「歯の神経」と呼ばれています。

根管治療では、この歯髄を取り除くため、治療後の歯自体は痛みを感じることはありません。

しかし、歯の周りには様々な組織が存在しています。

  • 歯根膜(しこんまく): 歯と骨の間にある薄い膜で、クッションのような役割を果たす
  • 歯槽骨(しそうこつ): 歯を支えている顎の骨
  • 歯肉(しにく): いわゆる歯茎のこと
  • セメント質: 歯根の表面を覆う組織

これらの周囲組織には神経が残っているため、炎症や異常が起きると痛みを感じます。

つまり、神経を抜いた後の痛みは「歯自体の痛み」ではなく、「歯の周りの組織の痛み」で、歯を叩いた時に響くような痛みを感じるのは、主に歯根膜に炎症が起きているためと考えられます。

根管治療後に歯を叩くと痛い5つの主な原因

根管治療後に打診痛が生じる原因は様々ですが、ここでは代表的な5つの原因について詳しく解説します。

1. 治療直後の一時的な歯根膜炎

根管治療の直後に打診痛を感じる場合、最も多い原因は治療による一時的な歯根膜の炎症です。

根管治療では、細い器具を使って歯の根の中を清掃・消毒します。

この際、器具が歯根膜を刺激したり、治療中に使用する薬剤の影響で、一時的に歯根膜に炎症が起こることがあります。

これは治療に伴う自然な反応であり、多くの場合は問題ありません。

根管治療後の痛みは、通常2〜3日から1週間程度で軽減していくことが多いとされています。

この期間内に徐々に痛みが引いていく場合は、一時的な炎症反応と考えられるため、過度に心配する必要はないでしょう。

2. 根尖性歯周炎・根尖病変(膿の蓄積)

根管治療後、しばらく経ってから痛みが出てきた場合や、治療後の痛みが長引く場合は、歯の根の先に問題が生じている可能性があります。

根管内に細菌が残っていたり、被せ物の隙間から細菌が侵入することで、歯根の先で細菌が増殖し、膿が溜まることがあります。

根の先に膿が溜まり、周囲の組織に炎症が広がった状態を「根尖性歯周炎(こんせんせいししゅうえん)」といいます。

根尖病変が小さいうちは自覚症状がほとんどないこともありますが、炎症が進んで大きくなると痛みや腫れが生じます。

膿の出口ができないと圧力が高まり、痛みが強くなっていきます。

3. 神経の取り残し

根管治療を行っても、歯の神経が一部残ってしまうことがあります。

歯根の中にある根管は細く入り組んでおり、曲がっていたり枝分かれしていたりするため、正確に全体を把握して歯髄を完全に除去することは困難な場合があります。

特に奥歯は根が複雑な形をしており、器具が届きにくい部分があるため、神経が残りやすいとされています。

神経の取り残しが疑われる場合は、再度根管治療を行って残った神経を完全に除去する必要があります。

4. 歯根破折(歯の根が割れている)

神経を抜いた歯に噛んだ時の鋭い痛みがある場合、歯根破折(しこんはせつ)の可能性があります。

歯髄には栄養や水分を運搬することで歯の健康を保つ役割があるため、これを除去すると歯は徐々に脆弱になっていきます。

強度が弱まった歯は、以下のような原因で割れやすくなります。

  • 硬いものを噛んだ時
  • 強い食いしばりや歯ぎしり
  • 歯を強くぶつけた時
  • 被せ物を支える土台(コア)による負担

歯根破折の程度にもよりますが、割れている場合は基本的に抜歯となるケースが多く、そのまま放置すると歯茎や骨にまで炎症を引き起こし、状態はどんどん悪化します。

通常のレントゲン写真では分かりにくいこともあるため、マイクロスコープ(歯科用顕微鏡)やCT撮影による精密な診断が必要になることがあります。

5. 噛み合わせの問題

根管治療後に被せ物を入れた際、噛み合わせの高さが適切でないと痛みの原因となることがあります。

根管治療後に入れる被せ物の高さが適正ではないと、その部分にだけ偏った強い力がかかってしまうため、それを支える歯根膜にも炎症が起きてしまいます。

また、歯ぎしりや食いしばりの癖がある方も、特定の歯に強い力が集中することで歯根膜炎を起こしやすくなります。

この場合は、被せ物の高さを調整することで症状が改善することが多いです。

痛みはいつまで続く?

根管治療後の痛みの期間は、原因によって大きく異なります。

一時的な痛みの場合

治療による刺激で起こる一時的な歯根膜炎の場合:

  • 2〜3日: 痛みのピーク
  • 4〜7日: 徐々に軽減
  • 1週間程度: ほぼ痛みがなくなる

この期間内に痛みが徐々に軽くなっていく場合は、正常な治癒過程と考えられます。

注意が必要な場合

以下のような場合は、一時的な痛みではない可能性があります。

  • 1週間以上経っても痛みが変わらない
  • 痛みが徐々に強くなっている
  • 2週間以上痛みが続く
  • 歯茎の腫れを伴う
  • 発熱がある

根管治療後の違和感は通常2〜3日程度で軽減していくのが通常です。

1週間以上痛みが変わらない、あるいは強くなっている場合は、早めの再受診をおすすめします。

いつ歯科医院を受診すべき?

すぐに受診が必要なケース

以下の症状がある場合は、早急に歯科医院を受診してください。

  • 強い痛みが続き、鎮痛剤が効かない
  • 痛みがどんどん強くなっている
  • 歯茎が大きく腫れている
  • 顔が腫れている
  • 発熱がある
  • 口が開けにくい

これらは重度の感染症の可能性があり、早急な処置が必要です。

経過観察しながら受診を検討するケース

以下の場合は、数日間様子を見ながら、改善しない場合に受診を検討します。

  • 軽い痛みや違和感が続く(1週間程度)
  • 噛むと少し違和感がある
  • 歯を叩くと響く感じがある
  • 疲れた時だけ痛む

ただし、痛みの強さや出現するタイミング(噛んだとき、冷たいものを飲んだときなど)を記録しておくと、歯科医師に伝えやすく、診断がスムーズになります。

自宅でできる対処法

根管治療後の痛みに対して、自宅でできる対処法をご紹介します。

痛み止めの服用

歯科医院で処方された鎮痛剤がある場合は、用法・用量を守って服用しましょう。

市販の鎮痛剤でも一時的に痛みを和らげることができます。

ただし、市販の鎮痛薬で一時的に楽になっても、根本的な原因が解決されていないこともあります。

薬が切れると強く痛むような場合は、必ず歯科医師に相談しましょう。

抗生剤の服用

抗生物質が処方された場合は、必ず指示通りに最後まで飲み切ることが重要です。

途中で服用をやめると、再感染のリスクが高まります。

患部を冷やす

腫れや強い痛みがある場合は、頬の上からタオルを巻いた保冷剤や氷で軽く冷やすことで、痛みが和らぐことがあります。

ただし、冷やしすぎると血流が悪くなり、痛みが増す場合がありますので、適度に冷やすようにしましょう。

安静にする

治療後は激しい運動や長時間の入浴を避け、十分な休息を取りましょう。

体調が悪い時や疲労時には痛みが増すことがあります。

また、以下のような行動は痛みを悪化させる可能性があるため、避けましょう。

  • 治療した歯で硬いものを噛む
  • 患部を触る、強く押す
  • 熱いお風呂に長時間入る
  • 激しい運動
  • アルコールの摂取
  • 喫煙

適切な口腔ケア

根管治療後も適切な口腔ケアをしていくことは重要です。

口腔内の衛生状態が良好でなければ再感染を起こすリスクが高まります。

治療部位を避けながら、優しく歯磨きを続けましょう。

根管治療・再治療なら長野県松本市の「望月デンタルクリニック」

神経の治療後に歯を叩くと痛い・響くという症状には、様々な原因があります。

治療直後の一時的な歯根膜炎であれば数日で改善しますが、根尖病変や歯根破折など、再治療が必要な場合もあります。

長野県松本市の望月デンタルクリニックでは、世界標準のガイドラインに沿った精密根管治療を提供しています。

複雑なケースや他院で抜歯と診断された歯でも、精密根管治療により保存できる可能性があります。

また、過去に根管治療を受けた歯に再び問題が生じた場合も、精密な再根管治療により歯を残せる可能性があります。

「根の治療を何度も繰り返している」「治療後にずっと違和感がある」という方は、ぜひご相談ください。

医院名望月デンタルクリニック
院長望月 一彦
TEL0263-87-7273
所在地〒390-0851 長野県松本市大字島内3739-3
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参考文献:

  • 須田英明. わが国における歯内療法の現状と課題. 日本歯内療法学会雑誌
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